母子の移行抗体について

2022/07/15 11:04

ベスト
アンサー

柳 和良 RECOVER BLS & ALS Rescuer course 心肺蘇生実技講

  • マルクペットクリニック
  • 得意動物: 犬 猫   得意分野:麻酔外科・外科全般
獣医師の柳と申します。 ルーちゃんが無事に回復し、元気にな れたこと喜ばしく思っております。 まず、大前提として。 抗体(ワクチン抗体も母親からの移行抗体も同じです)は、体の内部に病原体(ウイルス等)が侵入してきてから働くものになります。 また、侵入したうえで。 若干の語弊がある言い方かもしれませんが、”重症になる確率を減らす”もしくは”感染したとしても発症しにくくさせる(無症状含め)”役割を担います。 そのため、抗体があれば“感染しない”もしくは”発症しない”わけではないということはあらかじめご理解ください。 抗体は体内で、ウイルスに感染した細胞などを処理するために必要なものであって、 鎧のように侵入を許さないためのものではありません。 その観点を踏まえて、ご回答させていただきます。 まず、母子抗体の正確な消失時期は、新知見に関する情報がないので正確なことはお伝え出来ないのですが、 おおむね90日から140日頃とされてはいます。 これは、母乳摂取をいつまで続けていたかや、個体差によるところなど一概に判断しにくいため、あくまで目安として提示されることが多い日数です。 そのうえで、今回発症したのが移行抗体が消えたからなのか?ということについては、否定も肯定もできないと思います。 (抗体がまだ残っていたから発症しても亡くなることはなく、十分に治療の反応が良かったとも考えられると思いますので。) 当時、どのようなレベルでの移行抗体をお持ちだったかは検査等で判断していない限りなんとも言えません。 ただ、抗体があれば発症しないというものではありませんし、感染しないというものでもないのでいつ感染したかを確定するのは難しいかと思います。 ただ、抗体が減ってきたことで発症したもしくは、その段階で感染した可能性は否定できないかと思いますが、 数か月単位で感染していたのが何か月も経ってから発症したという点については考えにくいのではないか・・・と思います。 (ウイルスや免疫の専門家ではないので一般的な話になってしまいますが・・・。) また、発症している場合は同居猫等に感染させる可能性は否定できません。 そのため、猫同士の接触や、その子の世話をする人の手指消毒・この子の排せつ物の処理とその後の消毒を念入りにお願いすることになります。 パルボウイルスはエンベロープという殻をもっていないウイルスのため、 アルコール系消毒薬は効果がありません。次亜塩素酸もしくは塩素で対応をする形になります。